第15回世界コンピュータ将棋選手権優勝

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2005年5月3日から5日にかけて行なわれた 「第15回世界コンピュータ将棋選手権」において、 近山・田浦研究室で研究している将棋プログラム「激指」が全勝優勝を果たしました。

「激指」は近山研究室の学生4名が1999年に開発を始め、 その後も当初のメンバーを中心に開発を続けている将棋プレイヤです。 もともとは将棋の好きな学生が楽しみとして始めたプログラムでしたが、 コンピュータに人間のゲームを行なわせるためには、

など、現在の情報科学で解決すべきさまざまな研究課題が存在しており、 人工知能分野、情報処理基盤技術の総合力を試す良い課題である事がわかってきました。 近山・田浦研究室では、激指を使ってゲームに関連するこれらの研究を行ない、 その成果を激指自身にフィードバックするなどの幸せな関係を続けています。 例えば、過去の棋譜から指し手の統計的性質を抽出し、 それをもとに「ありそうな局面だけ」重点的に考える、という 「実現確率に基づく探索打ち切り手法」を提案し、 これは問題に依存する知識を一般的な形で表現する手法として高く評価されています。 研究成果は市販ソフトウェア「激指シリーズ」にも組み込まれ、 研究者以外のみなさまにも広く楽しんでいただいていると自負しています。

世界コンピュータ将棋選手権は、ほぼ全てのコンピュータ将棋プレイヤが参加する 代表的な選手権であり、1990年より毎年1回行なわれています。 参加者は毎年30〜50チームほどで、 日本以外にもイギリス、北朝鮮など外国からの参加もあります。 各参加者は、自分のコンピュータを会場に持ち込み、 コンピュータ同士をケーブルでつなぎ、 先手後手を決めてプログラムを起動するところまでしかコンピュータに触れません。 それ以降は参加者は全く手出しができず、プログラムが互いに自分の手を送りあって 勝手に対戦を行ない、勝敗を決します。 会場ではプロ棋士による盤面解説も行なわれ、 数年前まで開発者はプログラムの指すあまりの悪手に頭を抱えたり、 解説に苦笑いするしかない場面も多々ありましたが、 ここ数年はプログラムの指し手に会場全体が驚いたりするような、 レベルの高い応酬も時に見られるほどにレベルが向上してきました。 プロ棋士で日本将棋連盟理事の北島6段による今年の大会後の講評では、 決勝戦に残ったプログラムはいずれもアマチュア4段から5段の力があるとの評価をもらえるほどになっています。

本年の大会は5月3日から5日までの3日間、千葉県木更津市のかずさアークにおいて 39チームによって競われました。 5日の決勝は上位8チームによる総当たり戦で行なわれ、 激指は7戦全勝で優勝する事ができました。 激指の優勝は3年ぶり2度目になります。 優勝決定後、勝又5段と激指とのエキシビションマッチが 角落ち25分切れ負けの条件 (勝又プロが角を使わないハンデ戦、25分の持ち時間を使い切ったら負け)で行なわれ、 序盤に順調に優位を築き勝ちを確信した勝又プロに対し、 一瞬の隙を突いて激指が光速の寄せを見せ、逆転勝利をもぎとりました。 結果、今年の激指は間違いなくアマチュア5段レベルである、との評価をいただいています。

激指は今後、6月25、26日に行なわれるアマ竜王戦全国大会に特別参加し、 各都道府県の代表選手と対局します。 人間の高段者に対して現在のコンピュータ将棋プレイヤがどの程度勝負になるのか、 実に興味深いイベントです。

コンピュータ将棋は今、熱い時代へと突入しようとしているのです。


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